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特許-拒絶査定不服審判(3032件)
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特許-拒絶査定不服審判(3032件)
商標-拒絶査定不服審判(1377件)
2008/10/30 現在
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特許-拒絶査定不服審判事件(2008-009256)に関する詳細情報
【審判種別】 特許-拒絶査定不服審判
【法域】 特許
【発明の名称,商標など】 印刷装置への確実な流体的空気的および電気的接続を形成する取り替え可能インク容器
【結論】 特許(登録)しない
【適用条文等】 特-第126条第5項, 特-第159条第1項, 特-第29条第1項第3号
【審判番号】 2008-009256
【請求人】 ヒューレット・パッカード・カンパニー
【代理人】 後藤 政喜(弁理士)
【審判官】 長島 和子,酒井 進,上田 正樹
【審決日】 平成20年 9月24日
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【全文】
(注意) 著作権の関係上、図面が掲載されていない場合があります。

審決


不服2008-  9256
アメリカ合衆国カリフォルニア州パロアルト ハノーバー・ストリート 3000
 請求人
ヒューレット・パッカード・カンパニー
 
東京都千代田区霞が関3ー3ー1 尚友会館 後藤特許事務所
 代理人弁理士
後藤 政喜


 
 
 平成11年特許願第502823号「印刷装置への確実な流体的空気的および電気的接続を形成する取り替え可能インク容器」拒絶査定不服審判事件〔平成10年12月10日国際公開、WO98/55324、平成14年 5月 8日国内公表、特表2002-513341〕について、次のとおり審決する。



 結 論
 
 本件審判の請求は、成り立たない。



 理 由
 
1.手続の経緯
 本願は、1998年6月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1997年6月4日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成19年12月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年4月14日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年4月21日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。
 
2.平成20年4月21日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
 平成20年4月21日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
 本件補正は、特許請求の範囲(請求項数12)についての補正を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項10は、
「印字ヘッドから切り離して取り替え可能なインク容器からの電気信号に応答して印刷条件を制御する印刷装置と該インク容器との正しい流体的、電気的接続を確実にする該取り替え可能インク容器において、
前記印刷装置は、前記インク容器が挿入されると粗く整列させる粗整列装置を備え、
 前記インク容器を前記印刷装置に挿入する挿入方向に対して前縁および後縁を有するハウジングと、
 前記ハウジングの前記前縁のほうに設置され、前記印刷装置の流体入口と流体接続を形成するべく流体接続する流体出口と、
 前記印刷装置の前記前縁のほうに設置され、前記印刷装置の座標系のX、Y、Zの各軸で限られた範囲を移動可能な対応する電気接点と電気接続を形成するように係合する複数の電気接点と、
を備え、
 前記インク容器が前記印刷装置に挿入された最初の始状態で、
前記流体出口は前記流体入口と流体接続を形成して係合し前記対応する電気接点と前記複数の電気接点とは粗整列をおこない、
 前記インク容器が前記印刷装置に更に挿入された次の状態で、
前記対応する電気接点と前記複数の電気接点とは電気接続を形成するように係合する、
ことを特徴とする取り替え可能インク容器。」
と補正された。(下線は補正箇所を示すために当審で付した。)
 補正前後の請求項10に係る発明は、いずれも「インク容器」を請求するものであり、上記補正は、「インク容器」が挿入される印刷装置側の「対応する電気接点」について、「座標系のX、Y、Zの各軸で限られた範囲を移動可能な」と限定するものであって、「インク容器」そのものを限定するものではないが、形式的には限定されており、挿入される印刷装置側の一部を限定することにより「インク容器」そのものが限定されていると解釈し得る余地があるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものとして、本件補正後の請求項10に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。
 
(2)引用刊行物
 原査定の拒絶の理由に引用された特開平3-227650号公報(以下、「刊行物」という。)には、以下の記載が図示とともにある。
 ア.「第1図は本発明を適用するインクジェット記録装置の一例を示す。ここで、1はキャリッジ2に搭載された記録ヘッドであり、キャリッジ2は不図示のアイドラプーリとの間に張設されたタイミングベルトにより、これも不図示のキャリッジ駆動モータによって駆動され、その正逆転によって案内軸3に沿い往復移動される。なお、記録ヘッド1にはインクカートリッジ4から不図示のインクチューブを介してインクが供給され、キャリッジ2による左から右への移動中にそのインク吐出口(不図示)から対向配置されて搬送される被記録材である例えば記録シート5に向けてインクが吐出され、記録ヘッドの走査と被記録材の搬送との相対移動によって所望の記録が行われる。」(第4頁左下欄第17行~右下欄第11行)
 イ.「第1図の左方において、20はインクカートリッジ4をカートリッジ挿入口21からカートリッジガイド22を介して挿入したときにインクカートリッジ4に差込まれる中空針であり、この中空針20から不図示のチューブを介して記録ヘッド1にインクが供給される。」(第5頁左上欄第9~14行)
 ウ.「本例のインクカートリッジ4は、記録に使用されるインクが収容されたインク収容部材としてのインクカセット25とインクカセット25が着脱自在なアダプタ26とで構成されるものである。」(第5頁右上欄第2~5行)
 エ.「一方、インクカセット25に格納される可撓性のインク袋27にはインクカートリッジ4を記録装置側に装着するときにインク供給用の中空針20が差込まれるシリコーンゴムなどの弾性材料で形成されたキャップ部材31がチューブ等で接続される。また、32はアダプタ26の正面に装着されている情報媒体であり、電気的あるいは電子的に情報を記憶させておくことができるもので、例えばROM、電気的に消去が可能なROM、抵抗、コンデンサ、電池、バッテリバックアップRAM、論理回路等を構成要素としてあげることができる。」(第5頁左下欄第2~12行)
 オ.「かくして該情報媒体32にはインクカセット25に収納されているインクの品種に対応してインクジェット記録装置本体の制御を行なうために必要な情報が書き込まれる。32Aはその情報媒体32の端子であり、情報媒体32とインクジェット記録装置本体との間の電気的接続を行なう。」(第5頁左下欄末行~右下欄第5行)
 カ.「33はアダプタ26の両側面に形成されたレールであり、カートリッジガイド22を介して記録装置の挿入口21にインクカートリッジ4を挿入するときに、このレール33が不図示の案内溝と嵌め合わされることにより、正確に装着されるようにしてある。」(第5頁右下欄第7~12行)
 キ.「第3図は、第2図にて示したインクカセット25とアダプタ26とよりなるインクカートリッジ4をインクジェット記録装置のインクカートリッジ受入部40に装着するときの状態を示す。ここで、アダプタ26のレール33とインクジェット記録装置のカートリッジ挿入口21に設けられたガイド41とが精度良くかみ合ってインクカートリッジ4が矢印方向に挿入されるとキャップ部材31にインクジェット記録装置の受入部40に設置された中空のインク針20が差し込まれることにより、インク袋27内のインクがインクジェット記録装置内に供給可能になる。」(第6頁左上欄第14行右上欄第5行)
 ク.「更にまたインクカートリッジ4が完全にカートリッジ受入部40に装着されると、後述するインクジェット記録装置本体側の制御部と電気的につながっている接続ピン45と端子32Aとが1対1で接続され、情報媒体32に書き込まれた制御情報をインクジェット記録装置本体のCPUによってアクセスすることが可能となる。」(第6頁右上欄第10~16行)
 ケ.第1図から、カートリッジ挿入口21の手前にカートリッジガイド22が設けられていることが看取できる。
 コ.第3図から、アダプタ26の内、情報媒体32が設けられた部分が挿入方向に対して前縁となり、その反対側の部分が挿入方向に対して後縁となっていること、キャップ部材31が前記前縁のほうに設置されていること、インクジェット記録装置本体の一部であるガイド41に設置されている接続ピン45はアダプタ26の前縁のほうに設置されていることが看取できる。
 
 上記ア.、イ.の記載から、インクカートリッジ4が記録ヘッド1から切り離して取り替え可能なものであり、上記エ.、オ.の記載から、インクジェット記録装置本体は、インクカートリッジ4からの電気信号に応答して印刷条件を制御するものであることは、明らかである。刊行物記載のインクジェット記録装置本体とインクカートリッジ4は、正しい流体的、電気的接続がなされなければならないことは自明であるから、刊行物記載のインクカートリッジ4をインクジェット記録装置本体とインクカートリッジ4との正しい流体的、電気的接続を確実にする取り替え可能インクカートリッジ4と称することができる。
 上記記載及び図面を含む刊行物全体の記載から、刊行物には、以下の発明が開示されていると認められる。
「記録ヘッド1から切り離して取り替え可能なインクカートリッジ4からの電気信号に応答して印刷条件を制御するインクジェット記録装置本体と該インクカートリッジ4との正しい流体的、電気的接続を確実にする該取り替え可能インクカートリッジ4において、
前記インクジェット記録装置本体は、前記インクカートリッジ4が挿入されるカートリッジ挿入口21の手前にカートリッジガイド22を備え、
 前記インクカートリッジ4を前記インクジェット記録装置本体に挿入する挿入方向に対して前縁および後縁を有するアダプタ26と、
 前記アダプタ26の前記前縁のほうに設置され、前記インクジェット記録装置本体のインク針20と流体接続を形成するべく流体接続するキャップ部材31と、
 前記インクジェット記録装置本体の前記前縁のほうに設置される接続ピン45と電気接続を形成するように係合する複数の端子32Aと、
を備え、
 前記インクカートリッジ4を前記インクジェット記録装置本体のインクカートリッジ受入部40に挿入する場合、
アダプタ26のレール33とインクジェット記録装置本体のカートリッジ挿入口21に設けられたガイド41とが精度良くかみ合ってインクカートリッジ4が更に挿入されるとキャップ部材31にインクジェット記録装置の受入部40に設置された中空のインク針20が差し込まれ、
 更にまたインクカートリッジ4が完全にカートリッジ受入部40に装着されると、接続ピン45と端子32Aとが1対1で接続される、
取り替え可能インクカートリッジ4。」(以下、「引用発明」という。)
 
(3)対比
 本願補正発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「記録ヘッド1」、「インクカートリッジ4」、「インクジェット記録装置本体」、「アダプタ26」、「インク針20」、「キャップ部材31」、「接続ピン45」及び「端子32A」は、それぞれ本願補正発明の「印字ヘッド」、「インク容器」、「印刷装置」、「ハウジング」、「流体入口」、「流体出口」、「(印刷装置側の)対応する電気接点」及び「(インク容器側の)電気接点」に相当する。
 引用発明の「前記インクカートリッジ4を前記インクジェット記録装置本体のインクカートリッジ受入部40に挿入する場合、アダプタ26のレール33とインクジェット記録装置本体のカートリッジ挿入口21に設けられたガイド41とが精度良くかみ合ってインクカートリッジ4が更に挿入されるとキャップ部材31にインクジェット記録装置の受入部40に設置された中空のインク針20が差し込まれ、更にまたインクカートリッジ4が完全にカートリッジ受入部40に装着されると、接続ピン45と端子32Aとが1対1で接続される」と、本願補正発明の「前記インク容器が前記印刷装置に挿入された最初の始状態で、前記流体出口は前記流体入口と流体接続を形成して係合し前記対応する電気接点と前記複数の電気接点とは粗整列をおこない、前記インク容器が前記印刷装置に更に挿入された次の状態で、前記対応する電気接点と前記複数の電気接点とは電気接続を形成するように係合する」は、いずれも「前記インク容器が前記印刷装置に挿入されると、前記流体出口は前記流体入口と流体接続を形成して係合し、前記対応する電気接点と前記複数の電気接点とは電気接続を形成するように係合する」の点で共通する。
 よって、両者は、
「印字ヘッドから切り離して取り替え可能なインク容器からの電気信号に応答して印刷条件を制御する印刷装置と該インク容器との正しい流体的、電気的接続を確実にする該取り替え可能インク容器において、
 前記インク容器を前記印刷装置に挿入する挿入方向に対して前縁および後縁を有するハウジングと、
 前記ハウジングの前記前縁のほうに設置され、前記印刷装置の流体入口と流体接続を形成するべく流体接続する流体出口と、
 前記印刷装置の前記前縁のほうに設置され、前記印刷装置の対応する電気接点と電気接続を形成するように係合する複数の電気接点と、
を備え、
 前記インク容器が前記印刷装置に挿入されると、
 前記流体出口は前記流体入口と流体接続を形成して係合し、
 前記対応する電気接点と前記複数の電気接点とは電気接続を形成するように係合する、
取り替え可能インク容器。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]本願補正発明は、印刷装置が「前記インク容器が挿入されると粗く整列させる粗整列装置を備え」と特定されているのに対し、引用発明は、本願補正発明のような特定がない点。
[相違点2](印刷装置側の)対応する電気接点に関し、本願補正発明は、「印刷装置の座標系のX、Y、Zの各軸で限られた範囲を移動可能な」と特定されているのに対し、引用発明は、本願補正発明のような特定がない点。
[相違点3]本願補正発明は、「前記インク容器が前記印刷装置に挿入された最初の始状態で、前記流体出口は前記流体入口と流体接続を形成して係合し前記対応する電気接点と前記複数の電気接点とは粗整列をおこない、前記インク容器が前記印刷装置に更に挿入された次の状態で、前記対応する電気接点と前記複数の電気接点とは電気接続を形成するように係合する」と特定されているのに対し、引用発明は、本願補正発明のような特定がない点。
 
(4)判断
 上記相違点2について検討する。
 本願補正発明は、「インク容器」そのものを請求しているものであるにもかかわらず、上記相違点2に係る事項は、「インク容器」が挿入される印刷装置側の構成を特定するものである。相違点2の特定により「インク容器」そのものの構成は何等限定されていない。
 引用発明の接続ピン45(本願補正発明の「(印刷装置側の)対応する電気接点」に相当。)が座標系のX、Y、Zの各軸で限られた範囲を移動可能なものであるか否かは明らかでないが、挿入物を被挿入物に挿入する場合、挿入の便宜を図り多少のガタを設けることは、従来から行われていることであり、引用発明の接続ピン45がカートリッジ挿入口21及びカートリッジ挿入口21に設けられたガイド41とともに座標系のX、Y、Zの各軸で限られた範囲を移動可能なものとすれば、引用発明のインクカートリッジ4のアダプタ26のレール33とインクジェット記録装置本体のカートリッジ挿入口21に設けられたガイド41とを精度良くかみ合わせることによって、インクカートリッジ4の複数の端子32Aは接続ピン45と電気接続を形成するように係合することが可能である。そうすると、上記相違点2に係る事項は、「インク容器」の構成としては表現上の差にすぎず、実質的な相違点ではない。
 
 上記相違点1、3について検討する。
 本願補正発明は、「インク容器」そのものを請求しているものであるにもかかわらず、上記相違点1に係る事項は、「インク容器」が挿入される印刷装置側の構成を特定し、相違点3は、インク容器を印刷装置に挿入する行為におけるインク容器と印刷装置の関係を特定することにより「インク容器」を特定しようとするものである。
 引用発明のインクジェット記録装置本体が粗整列装置を備えているか否か明示されていないが、引用発明のインクジェット記録装置本体は、インクカートリッジ4が挿入されるカートリッジ挿入口21の手前にカートリッジガイド22を備えており、カートリッジガイド22に、インク容器が挿入されると粗く整列させる粗整列装置を備えれば、インクカートリッジ4(インク容器)がインクジェット記録装置本体(印刷装置)に挿入された最初の始状態で、接続ピン45(対応する電気接点)と複数の端子32A(電気接点)とは粗整列をおこない、前記インクカートリッジ4が前記インクジェット記録装置本体に更に挿入された次の状態で、前記接続ピン45と前記複数の端子32Aとは電気接続を形成するように係合することが可能となる。そうすると、上記相違点1、3の内、「最初の始状態で、前記流体出口は前記流体入口と流体接続を形成して係合し」を除いた事項は、「インク容器」の構成として表現上の差にすぎず、実質的な相違点ではない。
 更に、「最初の始状態で、前記流体出口は前記流体入口と流体接続を形成して係合し」について検討する。引用発明は、「アダプタ26のレール33とインクジェット記録装置本体のカートリッジ挿入口21に設けられたガイド41とが精度良くかみ合ってインクカートリッジ4が更に挿入されるとキャップ部材31にインクジェット記録装置の受入部40に設置された中空のインク針20が差し込まれ」るものであるから、精度良くかみ合った後にキャップ部材31(流体出口)にインク針20(流体入口)が流体接続を形成して係合するものであり、最初の始状態で、前記流体出口は前記流体入口と流体接続を形成して係合するとの明記はない。しかし、引用発明のインク針20を充分長く形成しておき、インク針20が接続ピン45に対して、粗整列と正しい整列の差を吸収する相対移動ができるようにすることは可能であって、インクジェット記録装置本体側の一部であるインク針20をそのようにしておけば、最初の始状態で、キャップ部材31はインク針20と流体接続を形成して係合することとなり、相違点3のインク容器を印刷装置に挿入する行為におけるインク容器と印刷装置の関係を実現可能であるから、相違点3は、「インク容器」そのものの構成を何等限定しておらず、「インク容器」の構成としては表現上の差にすぎず、実質的な相違点ではない。
 仮に、インク針20が接続ピン45に対して、粗整列と正しい整列の差を吸収する相対移動ができるようにすることが実現できず、相違点3によって、インク容器の流体出口は、組成列の段階で流体接続が完了しており、その後の粗整列と正しい整列の差を吸収する程度の変形し得ることを規定しているとしても、刊行物のエ.に「シリコーンゴムなどの弾性材料で形成されたキャップ部材31」と記載されているように、キャップ部材31は、弾性材料で形成(査定時に示した特開平9-109414号公報にも弾性材料で形成することが示されている。)され、変形し得るものであるから、前記差を吸収する程度のものとすることは当業者が容易になし得る程度のことである。
 よって、本願補正発明の上記相違点1、3は、表現上の差にすぎず、実質的な相違点ではないものであるか、そのような構成とすることは当業者が容易になし得る程度のことである。
 
 そして、本願補正発明の作用効果も、刊行物記載の発明から当業者が予測できる範囲のものである。
 
 したがって、本願補正発明は、その優先権主張日前に頒布された刊行物記載の発明であるか、刊行物記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号あるいは同条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
 
(5)むすび
 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
 
3.本願発明について
 平成20年4月21日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項10に係る発明は、平成19年11月15日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項10に記載された事項により特定されるものであり、その請求項10に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
 
「印字ヘッドから切り離して取り替え可能なインク容器からの電気信号に応答して印刷条件を制御する印刷装置と該インク容器との正しい流体的、電気的接続を確実にする該取り替え可能インク容器において、
前記印刷装置は、前記インク容器が挿入されると粗く整列させる粗整列装置を備え、
 前記インク容器を前記印刷装置に挿入する挿入方向に対して前縁および後縁を有するハウジングと、
 前記ハウジングの前記前縁のほうに設置され、前記印刷装置の流体入口と流体接続を形成するべく流体接続する流体出口と、
 前記印刷装置の前記前縁のほうに設置され、前記印刷装置の対応する電気接点と電気接続を形成するように係合する複数の電気接点と、
を備え、
 前記インク容器が前記印刷装置に挿入された最初の始状態で、
前記流体出口は前記流体入口と流体接続を形成して係合し前記対応する電気接点と前記複数の電気接点とは粗整列をおこない、
 前記インク容器が前記印刷装置に更に挿入された次の状態で、
前記対応する電気接点と前記複数の電気接点とは電気接続を形成するように係合する、
ことを特徴とする取り替え可能インク容器。」
 
(1)引用刊行物
 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。
 
(2)対比・判断
 本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「インク容器」が挿入される印刷装置側の「対応する電気接点」について「座標系のX、Y、Zの各軸で限られた範囲を移動可能な」との限定を省いたものである。
 そうすると、実質的に本願発明の発明を特定する事項を全て含み、さらに他の発明を特定する事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、刊行物記載の発明であるか、刊行物記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物記載の発明であるか、刊行物記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
 
(3)むすび
 以上のとおり、本願発明は、その優先権主張日前に頒布された刊行物記載の発明であるか、刊行物記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第1項第3号あるいは同条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
 よって、結論のとおり審決する。


        平成20年 9月24日

     審判長  特許庁審判官 長島 和子
          特許庁審判官 酒井 進
          特許庁審判官 上田 正樹

 
 
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示)                この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。


〔審決分類〕P18  .113-Z  (B41J)

            121
            575
 
 
出訴期間として90日を附加する。


上記はファイルに記録されている事項と相違ないことを認証する。
認証日 平成20年 9月24日  審判書記官  鈴木 玲子
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